松本 整
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COLUMN
健康コラム
怪我からの復帰(関谷敏彦の巻 その2)
2008.02.26
関谷選手が最初に大怪我をしたのは、平成2年8月30日 久留米競輪開設記念の決勝レースの時でした。スピードが乗った最終4コーナーで他の選手と接触、落車してしまいました。この時に何と右大腿骨が骨頭の所で折れてしまったのです。
すぐに病院へ運ばれて手術を受けたのですが、下肢を中心に使う競輪選手がこんな酷い骨折をしたら「スポーツ選手としては復帰出来ないと」ドクター達は考えました。
その為にスポーツ選手としては運動出来ないが、一般の人としては歩ける能力を残す為に骨折した所を良肢位(りょうしい)で固定してしまったのです。
片方の下肢を支柱として歩行する時に、つま先が両方揃って前を向いているより、怪我をした方のつま先をちょっと外側に開いた方が楽に歩けるのが分かりますか?
少しでも残った能力を有効に使える様に固定する事、それが良肢位なのです。と言う事は、この時点でスポーツ選手としては完全に諦め、後は少しでも楽に歩けるようにしてあげようと考えてドクター達は彼の折れた大腿骨を固定してくれたのです。
彼が退院して私の所で撮影したレントゲンを見て、その事実を知り愕然としました。
“関谷、この足では選手として復帰するのは無理だよ”
———何度説明しても彼は納得しませんでした。
“どんな痛い事でも辛い事でも我慢します。だから再び乗れる様にして下さい”
“それが出来ないから説明しているんだよ”
同じ会話を何度も繰り返ししました。しかし彼の真剣な顔を見ているうちに、もしかしたら奇跡が起こるかもしれないと思えてしまったのです。
彼を自宅に呼び、良肢位で固定した右下肢を元に戻す様なマッサージを始めました。三軸法という理論から行うマッサージなのですが、正直私もこんなマッサージで外側に向いたつま先が元に戻るとは考えていませんでした。マッサージは治療というより、むしろ格闘技の様なものでした。二人共汗だらけになり、さすがに我慢強い関谷も時々悲鳴をあげていました。
私も脇で見ていて痛いだろうなと思いました。しかし止めませんでした。
何故なら他に方法が考えられなかったからです。
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コラムの著者
寺門敬夫
ドクターズ コラム
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