松本 整
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COLUMN
健康コラム
怪我を根性で治そうとする者は一流にはなれない(その6)
2007.12.03
退院して40日後の7月29日、同じ競輪場の同じ場所で再び同じような落者事故が起きるという信じられない事が発生しました。
左の第6、第7肋骨が再骨折してしまったのです。幸いなことに前回の様な血胸、気胸はなかったのですが痛みは酷く、しかも世界選手権には、後1ヶ月しか時間がないのです。今回ばかりは我々もお手上げの状態でした。あとは中野の根性に頼るしかないと正直考えました。彼の目を見て “やるのか? ” “やります” 短い会話で全てが理解し合えたと思いました。
4〜5日の休養の後、バストバンドで胸を固定してバンクでの練習を開始しました。実戦同様の練習の後には氷による患部へのアイシング、更にはプールによるトレーニングが待っておりました。
世界選手権の2週間前に選手達はアメリカに出発しました。“2週間の現地での練習で最高の状態に仕上げる”このテーマにコーチ、マッサージ士、メカニシャン、医師等が垣根を越えて全員が協力し合ったのです。
アメリカに一週間遅れて着いた夜に、トレーナーの山本君が室にやってきました。“先生、私はこれから中野を怒らせます”何の事か最初は理解出来なかったが山本君は、中野に“今のままでは君は俵(当時中野の最大のライバルでした)に負ける。チームの勝利の為にこれからは俵を最優先で最高の状態に仕上げる”と言ったそうです。
翌日から中野が無口になってきました。“怒り”が彼の身体の中で“痛み”を消し“集中”を生んだのだと後で解りました。レースの3日前に中野本来のフォーム、スピード感が戻っているのを見た時に一流選手が持っている“運の強さ”というものをしみじみと実感したものです。
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コラムの著者
寺門敬夫
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