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松本 整 オフィシャルブログ「鉄人疾走」

「第一ステージ」

2007.09.18

7日、午前5時過ぎの東京。
まだ台風の影響が残っているのか、強い雨風は収まっていなかった。
しかし、道路は順調に流れ、10分程でタクシーは品川駅高輪口に着いた。大きなスーツケースを持っていた俺は、駅正面にあるエスカレーターを利用して新幹線の切符売場へ向かった。まだ閑散としている中央通路を通り窓口についたが、切符売場の窓口も自動販売機もシッターが下され利用はできなかった。
しばらく待って午前5時30分を回ったころ、やっとシャッターが開き切符を買おうと並んでいた十人程度の列が動き出した。

切符を受け取り、弁当と新聞を買ってエスカレーターに乗ってホームへ降りる。
ホームに流れるアナウンスには、発車の中止や遅延を知らせるものは全くなかった。どこかに不安が残る俺の気持ちとは裏腹に新幹線は当然といった風情で定刻にホームに到着した。

幸い、新しいN700系の新幹線の座席にはコンセントが付いていた。座席に座るとすぐにコンピューターを取り出し学会発表の練習を始めた。発表時間の制限である10分間で、この6年間の研究をすべて話しきることは出来ない。あらかじめ決めた要点をパワーポイントに合わせて説明して行く。

そうする中、新幹線は熱海で停止したまま動かなくなってしまった。まだ残る雨が規定値を超えたためだという。約45分遅れで新幹線は熱海駅を発車した。
この間もひたすら発表資料のパワーポイントを見ながら研究発表のポイントを心の中でつぶやいていた。

まだギリギリ発表に間に合う遅れだった。メールで新幹線の停止と遅れ時間を連絡した。
そして動き出して間もなく新幹線はまた停止した。今度は駅ではなく少し右に曲がっているコーナーの途中での停止である。今度の停止では1時間以上動かなかった。
再び動き出したときには、どう頑張っても発表に間に合わないことを確認し、発表演者を共同研究者の白石(日本競輪学校)に任せると連絡をした。

なんとか学会会場についた時には、バイオメカニクス分科会の発表はすべて終わっていた。
迎えに来てくれた白石からは、すでに発表は上手くいき、反響は大きかったと連絡を受けていた。
俺がついてからも何人もの研究者の方が、今回の発表のことで声をかけてきてくれたことが、その発表に多くの人が関心を持ったことを裏付けていた。

今回の一見無駄になってしまったような俺の発表のための努力。しかし、こういった無駄に見える積み重ねの部分ほど重要だと考えている。ぎりぎりチャンスが消え去るところまで、必死で努力する姿勢が大きな成果を生みだすと俺は信じている。
その場だけではなく、常にそこまで追い求める気持ちと責任感は必ず人に伝わる。

天候という自然現象に翻弄された2日間だったが、この6年研究し、3年間チームを組んでやってきた新しい発想のトレーニング法は学会発表というという第一ステージを終えた。そしてすぐに、新たなステージである論文化する作業が待っている。
そしてその成果が多くのアスリートに貢献することを願っている。
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