「判断と予測」
2007.09.11
「現在、東海道新幹線は台風9号の影響で上下線とも運転を見合わせています。運転再開のめどは立っておりません。」東京駅のホームに何度も同じアナウンスが流されていた。午後6時過ぎの東京駅の様子である。
俺は明日の日本体育学会で順天堂大学との共同研究を発表するため、この日のうちに神戸まで移動しなければならなかった。まず運転再開した場合、一番最初に発車する新幹線に切符を変更した。それから台風の状況を調べるために、あちこちに連絡しているが携帯のつながりが非常に悪い。今後台風がどう動くのか?その情報が手に入らなかった。そうこうしている内にも時間は過ぎていく・・・。
先週末は明日の学会発表の打ち合わせのため千葉の順天堂大学佐倉キャンパスへ、今週は頭から合宿帯同のため長野へ移動。昨日長野から東京へ移動し2本のTV撮りのあと神戸へ移動のスケジュールだった。日本国内とはいえ過密な移動スケジュールを正確に、かつそれぞれの仕事を充実してこなしていただけに、最後までうまく運べると思いこんでいた。「自然の力前には文明の利器も全く歯が立たないな・・・。」新幹線の運転中止を聞いて心の中でつぶやいた。
この日、台風の接近を知り、最悪の場合に備えて、飛行機、新幹線双方の切符を用意し最善の策をとってはいたが、自然の驚異の前には手も足も出なかった。
やっと連絡が着き、今後の台風の状況を把握できたのが約1時間後だった。新幹線の運転再開を諦め、宿泊先を探す。携帯のサイトはもちろんエアエッジでつないだコンピューターで検索しても宿泊先を確保することはできない。あらゆる手を尽くし、何とかホテルを予約し、明日の始発の席も確保して一息ついた時には午後8時30分を回っていた。
こういった非常事態には出来る限り情報を早く収集し、次の行動を素早く決めなければならない。これは、ちょっとした危機管理能力と言えるだろう。こうした意識のないものは、重大なニュースを見ても次の行動が思い浮かぶことがない。つまり次の一手を人より先に打つことが出来ないということになる。当然手にする結果は不利なものとなる。
今回つながらない携帯電話に依存していた俺は、その日、台風によって足止めされた35万人の人間の中で、機敏に次の事態を予測した部類には入らないだろう。東京という大都市ですら、突然足止めされた35万人を吸収することは出来ないようだ。多くの人が宿泊先を見つけられずにいた。俺も危うく宿泊先どころか、最大の目的である移動の手段、翌日の始発の席すら確保できないところだった。
翌日、朝一番の品川発で新神戸へ向かうため午前5時過ぎにホテルをチェックアウト。
学会発表の練習と仕事の整理で1時間半ほどしか寝ていない頭は意外とクリーンだった。
未だに雨風とも収まらない中、タクシーは品川駅へ向かった・・・。